特許・商標登録・意匠登録、著作権・国際契約・訴訟事件・知的財産権全般を扱う特許業務法人秀和特許事務所
2018年
開催日
レポート担当内海現太
知財高裁知事件番号平成29年(行ケ)第10063号
技術分野はんだ、ソルダペースト、ソルダーレジスト
キーワード進歩性、追加実験データ
原告千住金属工業株式会社
被告株式会社タムラ製作所
判決結果請求認容(審決取消)
争点本件特許発明は甲1に対する進歩性を有するか。被告(特許権者)による追加実験データを、本件特許発明の進歩性判断で参酌できるか否か。
事案の概要

発明の名称を「ソルダペースト組成物及びリフローはんだ付方法」とする発明についての特許権(特許第4447798号)を有する被告に対し、原告が特許無効審判を請求した。被告が追加実験データを提出して反論したところ、特許庁が追加実験データの妥当性を認めつつ、請求不成立(特許維持)審決をした。原告が当該審決の取り消しを求め、裁判所がそれを認めた。

原審決では、本件に記載された効果は優れたものであって甲1から予測し得ないと認定した。また、本件追加実験データについて、公証人立会いのもの行われたものであるので、当該追加実験は適切であると判断した。

一方、本判決では、本件に記載された効果は甲1から予測可能であると認定した。また、被告提出のデータの判断基準の曖昧さを指摘しつつ、かかる判断基準に基づく評価方法は判定者の主観による変動が生じ得る方法であって、恣意的な評価を排除するために必要な、明確な判定基準に基づくものであるとはいい難いと認定した。さらに、そうである以上、被告による追加実験の結果は、本件特許発明の格別顕著な効果を客観的に示すものとは言えないとして、本件特許発明の進歩性判断に際して当該追加実験の結果を参酌しなかった。

開催日
レポート担当渡部充
知財高裁知事件番号平成29年(行ケ)第10007号
技術分野農薬
キーワード訂正の可否、実施可能要件、サポート要件
原告バイエルクロップサイエンス株式会社
被告ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
判決結果請求棄却(特許維持)
争点マーカッシュ形式で記載された選択肢を削除し特定の組合せを採用する訂正の可否、具体的な実施例の記載や効果に関する実験データの記載がない場合に実施可能要件及びサポート要件を満たすか否か
事案の概要

発明の名称を「2-ベンゾイルシクロヘキサン-1、3-ジオン」とする発明についての特許権(特許第4592183号)を有する被告に対し、原告が特許無効審判を請求し、被告が訂正を請求したところ、特許庁が、本件訂正を認めた上で、請求不成立(特許維持)審決をしたため、原告は、その取消を求めたが、裁判所はその請求を棄却した。

本件訂正について、本判決では、「審査基準においても、訂正の結果、残った発明特定事項で特定されるものが新たな技術的事項を導入するものであるか否かで判断すべきものとされている。」とし、「本件訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とし、また、本件明細書に開示された技術的事項に新たな技術的事項を導入するものでないから、本件明細書の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項の範囲内である。」との判断を示した。

また、実施可能要件について、本判決では「具体的な実施例の記載がない化学物質についても、明細書の記載と出願時の技術常識に基づいて、当業者が過度の試行錯誤を要することなく製造できることが認められれば、実施可能要件が満たされる場合もある。」との判断を示した。

さらに、サポート要件について、本判決では、「化学物質に関する発明の課題は、一般的には、新規かつ有用な化学物質を提供することである。」とし、「当業者は、本件訂正発明の化学物質の化学構造と従来技術の除草化学物質との共通性から本件訂正発明に係る化学物質が、従来技術の除草剤の有効成分と同様に課題を解決できることが推認できる。」、また、「サポ-ト要件を満足するために、発明の詳細な説明において発明の効果に関する実験デ-タの記載が必ず要求されるものではない。特に本件訂正発明は、新規な化学物質に関する発明であるから、医薬や農薬といった物の用途発明のように具体的な実験デ-タ、例えば、具体的な除草活性の開示まで求めることは相当でない。」との判断を示した。

開催日
レポート担当杉本良平
知財高裁知事件番号平成28年(行ケ)第10222号
技術分野化学
キーワードサポート要件
原告タテホ化学工業株式会社
被告協和化学工業株式会社
判決結果審決取消(請求認容)
争点本件発明1に対するサポート要件
事案の概要

本件特許の出願当時,フォルステライト被膜の性能改善という課題の解決を図るに当たり,焼鈍分離剤用酸化マグネシウムに含有される微量元素の含有量に着目することと,CAA 値に着目することとが考えられるところ,当業者にとって,いずれか一方を選択することも,両者を重畳的に選択することも可能であったと見るのが相当である(なお,微量元素の含有量に着目する発明にあっても,焼鈍分離剤用酸化マグネシウムのCAA 値とサブスケールの活性度とのバランスが取れていない場合には,その実施に支障が生じる可能性があることは前示のとおりであるが,この点の調整は,甲1,5~7,67,乙4等によって認められる技術常識に基づいて,当業者が十分に行うことができるものと認められる。)。

以上を総合的に考慮すると,当業者であれば,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件微量成分含有量及び本件モル比を有する焼鈍分離剤用酸化マグネシウムにより本件課題を解決し得る旨が開示されているものと理解し得ると見るのが相当である。