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USPTO 2019年1月改訂「発明の特許適格性に関するガイダンス」

 米国特許商標庁(USPTO)は、2019年1月7日に、米国特許法第101条(35 USC§101)について、発明の特許適格性に関するガイダンス (Revised Patent Subject Matter Eligibility Guidance)を改訂しました。

  1. 改訂ガイダンスの主な内容

    1. 101条の審査手順(Alice テスト)のステップ 2Aが2つのパート(プロング1、プロング2)に分かれます。
      →クレームが司法上の例外を含んでいてもそれが実用的な応用に組み込まれていれば特許適格性を満たすことが明確になりました。
    2. 司法上の例外としての「抽象的アイデア」は、原則、(1) 数学的コンセプト、(2) 人間活動を構成する方法、(3) 精神プロセス の3グループに限定されます。
      →「抽象的アイデア」に該当するかをより容易に判断することができます。

  2. 予想される効果

    2014年のAlice判決以後、特にソフトウェアとコンピュータタイプの特許クレームについて、101条の拒絶を克服するのは困難でした。しかし、上記の改訂内容を考慮すると、101条に基づく拒絶が減少することが期待されます。

  3. 改訂ガイダンスに基づく、101条の審査手順(Alice テスト)

    ステップ1

    クレームの発明が、法定のカテゴリ(プロセス、機械、製造物、または組成物)に属するかどうかを決定する。

    ステップ2A

    • プロング1

      クレームが「司法上の例外」(①自然法則、②自然現象、または③抽象的アイデア)を含むか否かを決定する。③抽象的アイデアは以下のいずれかに該当するかで判断する。※従来の「抽象的アイデアを識別する適格性クイックリファレンスシート」は用いない。
      • 数学的コンセプト
      • 人間活動を構成する方法
      • 精神プロセス
    • プロング2

      クレームが司法上の例外を含む場合、それが従来的なものであるか否かにかかわらず、個別及び組み合わせにより追加の要素を識別し、司法上の例外が実用的な応用に組み込まれているか否かを評価する。

      [組み込まれていると考えられる例]
      1. 追加の要素が、コンピュータの機能の向上、または他の技術や技術分野の向上を示すものである。
      2. 追加の要素が、特定の治療または疾患または病状の予防をもたらすために司法上の例外を適用または使用するものである。

    ステップ2B

    クレームに、司法上の例外が実用的な応用に組み込まれていないと判断された場合は、ステップ2Aで評価されたすべての追加要素が、よく知られた、通常の、またはありふれたものであるかを判断する。

    今回のガイドライン改訂に伴い、「Subject Matter Eligibility Examples: Abstract Ideas」のExamples 37-42が追加されました。
    Example 37が、文言が少し異なるクレーム1(2A-2で適格性満たす例)、クレーム2(2A-1で適格性満たす例)、クレーム3(適格性満たさない例)に分けて、各ステップの判断をしているので、以下に取り上げます。

  4. 改訂ガイダンスに基づく、101条の審査サンプル

    サンプル 37 –グラフィカルユーザインタフェース上のアイコンの再配置

    背景技術: (略)

    クレーム1:
    A method of rearranging icons on a graphical user interface (GUI) of a computer system, the method comprising:
     receiving, via the GUI, a user selection to organize each icon based on a specific criteria, wherein the specific criteria is an amount of use of each icon;
     determining, by a processor, the amount of use of each icon over a predetermined period of time; and
     automatically moving the most used icons to a position on the GUI closest to the start icon of the computer system based on the determined amount of use.

    ステップ 分析
    ステップ1:
    法定のカテゴリに属するか?
    はい。
    クレームは一連のステップを列挙しているため、プロセスの発明です。
    ステップ2A プロング1:
    クレームが「司法上の例外」を含むか?
    はい。
    本クレームは、精神プロセス(司法上の例外)を含んでいます。・・・determining stepは「by a processor」という一般的なプロセッサーの記載しかなく、精神プロセスを越えるものではない。
    ステップ2A プロング2:
    司法上の例外が実用的な応用に組み込まれているか?
    はい。
    クレームは、全体として精神プロセスを実用的な応用に組み込んでいます。特に、追加の要素(最終ステップ)は、従来のシステムに対して特定の改善を提供する使用法に基づいてアイコンをユーザに自動的に表示する特定の方法を列挙し、その結果、電子デバイスのための改善されたユーザインターフェースを提供します。したがって、クレームは実用的な応用を組み込んでいるので適格性ありです。
    → ○ 特許適格性あり
    ステップ2B:
    追加要素が創意工夫のある概念を提供しているか?
    判断不要

    クレーム2:
    A method of rearranging icons on a graphical user interface (GUI) of a computer system, the method comprising:
     receiving, via the GUI, a user selection to organize each icon based on a specific criteria, wherein the specific criteria is an amount of use of each icon;
     determining the amount of use of each icon using a processor that tracks how much memory has been allocated to each application associated with each icon over a predetermined period of time; and
     automatically moving the most used icons to a position on the GUI closest to the start icon of the computer system based on the determined amount of use.

    ステップ 分析
    ステップ1:
    法定のカテゴリに属するか?
    はい。
    クレームは一連のステップを列挙しているため、プロセスの発明です。
    ステップ2A プロング1:
    クレームが「司法上の例外」を含むか?
    いいえ。
    クレームは、いかなる司法上の例外(精神プロセス、人間活動を構成する方法、数学的コンセプト)も列挙していないため、適格です。・・・determining stepは「a processor that tracks how much memory has been allocated to each application associated with each icon」という具体的な機能を有するプロセッサーを利用するものであり、クレーム全体として、精神プロセスを越えるものである。
    → ○ 特許適格性あり
    ステップ2A プロング2:
    司法上の例外が実用的な応用に組み込まれているか?
    判断不要
    ステップ2B:
    追加要素が創意工夫のある概念を提供しているか?
    判断不要

    クレーム3:
    A method of ranking icons of a computer system, the method comprising:
     determining, by a processor, the amount of use of each icon over a predetermined period of time; and
     ranking the icons, by the processor, based on the determined amount of use.

    ステップ 分析
    ステップ1:
    法定のカテゴリに属するか?
    はい。
    クレームは一連のステップを列挙しているため、プロセスの発明です。
    ステップ2A プロング1:
    クレームが「司法上の例外」を含むか?
    はい。
    本クレームは、精神プロセス(司法上の例外)を含んでいます。
    ステップ2A プロング2:
    司法上の例外が実用的な応用に組み込まれているか?
    いいえ。
    追加の要素は、抽象的アイデアを実用的な応用に組み込んでいません。・・・determining stepは「by a processor」という手段しか記載がなく、精神プロセスを越えるものではない。
    ステップ2B:
    追加要素が創意工夫のある概念を提供しているか?
    いいえ。
    クレームの追加要素は、汎用コンピュータコンポーネントを使用して例外を適用するための単なる指示にすぎません。すなわち、一般的なコンピュータコンポーネントを使用して例外を適用するための単なる命令は、創意工夫のある概念を提供していないため、特許適格性なしです。・・・determining stepおよびranking stepともに単なる「processor」としか記載がなく、ありふれた手段しか記載がない。
    → × 特許適格性なし