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法学者の意見書って意味があるの?

特許権侵害訴訟をはじめ、さまざまな知的財産関係の訴訟で、原告から、あるいは被告から、法学者の意見書が提出されることがあります。極端な場合には、それぞれの当事者から、何通もの意見書が提出されることすらあります。では、法学者の意見書を提出することには、どのような効果があるのでしょうか?

法律の解釈は、いくつものケースでの当事者の議論を通じた裁判例の蓄積、そして、最終的には最高裁判所の判例によって決まるものです。いまどき、法律の解釈が学説によって決まるなどと信じている人は、学者の中でも、絶滅危惧種ではないでしょうか。だとすると、法学者の意見書が裁判官に大きなインパクトを与えると期待するのは楽観的にすぎるでしょう。

さらに、提出された意見書の中身とほぼ同じ内容が、当事者が提出される準備書面にも書かれているはずです。だとすると、そんなこと、訴訟代理人が自分で書けばすむことではないか、ということにもなりそうです。

それにもかかわらず、法学者の意見書を用意することに、何か意味があるのでしょうか?

ほぼ確実なのは、相手方の訴訟遂行コストを引き上げる、という効果です。我が方が、それなりにステータスの高い法学者の意見書を準備することは、相手方の訴訟遂行コストを、より高くすることにつながります。法学者の意見書そのもののインパクトが限定的なことがわかっていたとしても、相手方としては、我が方と同等かまたはそれを超えるステータスを持つ法学者から意見書をもらってこなければならないような気持ちになるのが自然です。そのような法学者を見つけて、我が方の法学者と反対の意見書を書かせるために、相手方の弁護士や弁理士がそのソーシャル・ネットワークを駆使して法学者とコミュニケーションをとる、その労力と時間は、無視できないものとなります。言うまでもなく、相手方のコストが高くなれば、その分だけ、我が方が有利になります。

もっとも、弁護士や弁理士が確保した法学者の関心事が、問題の訴訟の、ほんとうの争点とは、ずれてしまっている可能性もあります。たとえば、ある特許発明を実施する製品について、使用済み製品を再生した商品が出回っているとします。再生品が特許権を侵害しているかどうかが争われている場合、ほんとうの争点は、(1) 再生品は、特許請求の範囲に示されたすべての構成要件を充足するか、(2) 再生される前の使用済み製品は、一つまたは二つ以上の構成要件を失っているか、そして、(3) その失われた構成要件は、実質的な意味を持たないものであったりはしないか、ということです。これらは、いずれも、技術的な問題です。法学者が “特許権の消尽” について何か偉そうな意見書を書いたとしても、いわば、不合格の答案でしかないのです。



寺本教授のリーガルチップス(Legal tips by Professeor Teramoto)