特許・商標登録・意匠登録、著作権・国際契約・訴訟事件・知的財産権全般を扱う秀和特許事務所
2017年
開催日
レポート担当伊藤和真
最高裁事件番号平成28年(受)第632号
技術分野機械
キーワード訂正の再抗弁
原告X
被告Y
判決結果上告棄却
争点無効の抗弁に対する訂正の再抗弁を主張するために、現にこれらの請求をしている必要はあるかないか
事案の概要

発明の名称を「シートカッター」とする発明についての特許権(特許第5374419号)を有する上告人は、被上告人に対し、被上告人が販売する工具の販売の差止め及び損害賠償等を求める訴訟(第1審)を提起し、第1審は、上告人の請求を一部認容する旨の判決を言い渡した。

これに対し、被上告人は、第1審判決に控訴(第2審)をした上で、上告人の特許には特許法123条1項2号の無効理由が存在するとして、無効の抗弁を主張した。第2審において、上告人は、口頭弁論終結時までに、訂正の再抗弁を主張しなかった。そして、第2審は、上告人の特許は特許法29条1項3号に違反してされたものであるとして、被上告人による無効の抗弁を容れて、第1審判決中、被上告人敗訴部分を取り消し、上告人の請求をいずれも棄却する旨の判決を言い渡した。

上告人は、第2審判決に対して上告及び上告受理の申立てをするとともに、上告人の特許権に係る特許請求の範囲の減縮を目的として、訂正審判を請求したところ、特許庁において訂正をすべき旨の審決がされた。この訂正審判では、訂正発明は、上告人が提示した刊行物(米国特許第7178246号明細書)に記載された発明との関係において、特許法29条1項3号及び29条2項の規定に違反しないので、独立特許要件を充足するとされた。なお、上記刊行物は、第2審において被上告人が提出した証拠であって、該刊行物に記載された発明は、第2審において、上告人の特許発明と同一の発明であると認められた発明である。

ここで、第2審で無効の抗弁が主張された時点では、上告人特許に対して被上告人が請求した特許無効審判の審決に対する審決取消訴訟が係属中であって、上告人は、第2審の口頭弁論終結時までに、訂正審判の請求又は特許無効審判における訂正の請求をすることができなかった。

所論は、本件の上告審係属中に本件訂正審決が確定し、本件特許に係る特許請求の範囲が減縮されたことにより、原判決の基礎となった行政処分が後の行政処分により変更されたものとして、民訴法338条1項8号に規定する再審事由があるといえるから、原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある旨をいうものである。

本判決では、「特許権者が,事実審の口頭弁論終結時までに訂正の再抗弁を主張しなかったにもかかわらず,その後に訂正審決等が確定したことを理由に事実審の判断を争うことは,訂正の再抗弁を主張しなかったことについてやむを得ないといえるだけの特段の事情がない限り,特許権の侵害に係る紛争の解決を不当に遅延させるものとして,特許法104条の3及び104条の4の各規定の趣旨に照らして許されないものというべきである。これを本件についてみると,前記事実関係等によれば,上告人は,原審の口頭弁論終結時までに,原審において主張された本件無効の抗弁に対する訂正の再抗弁を主張しなかったものである。そして,上告人は,その時までに,本件無効の抗弁に係る無効理由を解消するための訂正についての訂正審判の請求又は訂正の請求をすることが法律上できなかったものである。しかしながら,それが,原審で新たに主張された本件無効の抗弁に係る無効理由とは別の無効理由に係る別件審決に対する審決取消訴訟が既に係属中であることから別件審決が確定していなかったためであるなどの前記1(5)の事情の下では,本件無効の抗弁に対する訂正の再抗弁を主張するために現にこれらの請求をしている必要はないというべきであるから,これをもって,上告人が原審において本件無効の抗弁に対する訂正の再抗弁を主張することができなかったとはいえず,その他上告人において訂正の再抗弁を主張しなかったことについてやむを得ないといえるだけの特段の事情はうかがわれない。 以上によれば,原判決には所論の違法はなく,論旨は採用することができない。よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。」との判断を示した。

開催日
レポート担当倉元なぎさ
最高裁事件番号平成29年3月24日 平成28年(受)第1242号
技術分野医薬品の製造方法
キーワード均等侵害
原告DKSHジャパン株式会社、岩城製薬株式会社、高田製薬株式会社、株式会社ポーラファルマ
被告中外製薬株式会社(特許権者)
判決結果請求棄却
争点均等侵害の成否について(第5要件の成否)
事案の概要

角化症治療薬の有効成分であるマキサカルシトールを含む化合物の製造方法の特許に係る特許権の共有者である被上告人が,上告人らの輸入販売等に係る医薬品の製造方法は,上記特許に係る特許請求の範囲に記載された構成と均等なものであり,その特許発明の技術的範囲に属すると主張して,上告人らに対し,当該医薬品の輸入販売等の差止め及びその廃棄を求める事案である。

これに対し,上告人らは,本件では,平成10年判決にいう,特許権侵害訴訟における相手方が製造等をする製品又は用いる方法(以下「対象製品等」という。)が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情が存するから,上記医薬品の製造方法は,上記特許請求の範囲に記載された構成と均等なものであるとはいえないと主張して,被上告人の請求を争った。

本判決では、「出願人が,特許出願時に,特許請求の範囲に記載された構成中の対象製品等と異なる部分につき,対象製品等に係る構成を容易に想到することができたにもかかわらず,これを特許請求の範囲に記載しなかった場合であっても,それだけでは,対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情が存するとはいえないというべきである。」、「出願人が,特許出願時に,特許請求の範囲に記載された構成中の対象製品等と異なる部分につき,対象製品等に係る構成を容易に想到することができたにもかかわらず,これを特許請求の範囲に記載しなかった場合において,客観的,外形的にみて,対象製品等に係る構成が特許請求の範囲に記載された構成を代替すると認識しながらあえて特許請求の範囲に記載しなかった旨を表示していたといえるときには,対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情が存するというべきである。」と規範を示した上で、「前記事実関係等に照らすと,被上告人が,本件特許の特許出願時に,本件特許請求の範囲に記載された構成中の上告人らの製造方法と異なる部分につき,客観的,外形的にみて,上告人らの製造方法に係る構成が本件特許請求の範囲に記載された構成を代替すると認識しながらあえて本件特許請求の範囲に記載しなかった旨を表示していたという事情があるとはうかがわれない。」との判断を示した。

開催日
レポート担当増渕浩美
知財高裁事件番号平成28年(行ケ)第10025号
技術分野機械
キーワードプロダクト・バイ・プロセス・クレーム
原告X
被告特許庁長官
判決結果請求棄却
争点明確性要件(プロダクトバイプロセスクレームに該当するか)
事案の概要

原告は、発明の名称を「ロール苗搭載樋付田植機と内部導光ロール苗。」とする特許出願をしたが(特願2011-87735号)拒絶査定を受けた。拒絶査定不服審判を請求し、手続補正書を提出した。更に、拒絶理由通知を受け、手続補正書を提出して特許請求の範囲を補正したが、拒絶審決がなされた。原告は、本件審決の取消しを求めて本件訴訟を提起した。

本件審決では、本願補正発明1及び2はプロダクトバイプロセスクレームに該当すると判断されたが、本件訴訟において、特許請求の範囲に物の製造方法が記載されている場合であっても、一般的な場合と異なり、当該製造方法が当該物のどのような構造又は特性を表しているのかが、特許請求の範囲、明細書、図面の記載や技術常識から明確であれば、あえて特許法36条6項2号との関係で問題とすべきプロダクト・バイ・プロセス・クレームに当たるとみる必要はない、と判断された。なお、原告の拒絶審決取消の請求は、本願補正発明3及び4の明確性要件違反により棄却されている。