特許・商標登録・意匠登録、著作権・国際契約・訴訟事件・知的財産権全般を扱う秀和特許事務所
2013年
開催日
事件番号平成25年(行ケ)第10063
技術分野
キーワード
担当弁理士北山高雅
原告関西熱化学株式会社
被告特許庁長官
判決結果請求認容(拒絶審決の取消)
争点発明の明確性
事案の概要

「均す」という言葉自体は「たいらにする。高低やでこぼこのないようにする。」と一般に理解されている(岩波書店「広辞苑第6版」。甲12)。そのため、本願発明1における「平準化変位線」について,当業者は,実測炉壁間距離変位線に基づいて「カーボン付着や欠損による炉壁表面の変位」を「たいらにする。高低やでこぼこのないようにする。」ことによって求めるものであると認識できる。かつ,当業者は,本願発明1がこうして求めた平準化変位線と実測炉壁間距離変位線とによって囲まれた面積の総和をコークス製造毎に求め,上記面積の総和の変化に基づいて,炉壁状態の変遷を診断するものであることを理解することができる。以上より,本願発明1の「カーボン付着や欠損による炉壁表面の変位を均す」との記載の技術内容自体は明確である、として審決を取り消した。

開催日
事件番号平成24年(行ケ)10295
技術分野医薬
キーワード特許権の存続期間の延長登録
担当弁理士安西悠
原告武田薬品工業株式会社
被告特許庁長官
判決結果審決取消(拒絶審決取消)
争点本件出願に係る特許発明の実施に特許法67条2項に定める処分を受けることが必要であったか否か
事案の概要

本件クレームの「最高血中薬物濃度到達時間が約60分以内である」との記載は,速放性組成物自体が有する特性を限定したものであり,したがって,速放性組成物のみを投与した場合の最高血中薬物濃度到達時間を意味するものと解釈すべきである。

審決が,本件対象医薬が本件クレームの「最高血中薬物濃度到達時間が約60分以内である速放性組成物」との要件を充足するか否かを判断するに当たり,本件速放性組成物とは組成の異なるFRGの最高血中薬物濃度到達時間である1.04±0.498時間を判断の基礎としたことは誤りであるといわざるを得ず,この誤りは審決の結論に影響を及ぼすものである。

本件使用成績を本件対象医薬が本件クレームの「(A)薬物を含有し,最高血中薬物濃度到達時間が約60分以内の速放性組成物」を充足することの根拠とすることはできないとした審決の判断には誤りがあるといわざるを得ず,この誤りは審決の結論に影響を及ぼすものである。

開催日
事件番号平成24年(行ケ)第10433
技術分野
キーワード実質同一
担当弁理士増渕敬
原告日立電線株式会社(訴訟承継人)・日立金属株式会社
被告特許庁長官
判決結果請求認容(拒絶審決取消)
争点本件発明が、引用発明と実質的に同一であるか
事案の概要

29条の2による拒絶審決を受けて、原告が審決取消訴訟を提起した事案。裁判所は、引用発明について、本件発明と同様の解決課題を有するものではないため、被告の主張はその前提自体を欠くと判断した。そのうえで、本願発明は引用発明と同一または実質同一の発明ではないとし、原告の請求を認容した。

開催日
事件番号平成24年(行ケ)第10425
技術分野船舶
キーワード新規事項の追加
担当弁理士菊池美香
原告三菱重工、日立製作所
被告三井造船(他7社)
判決結果審決取消
争点新規事項の追加
事案の概要

特許無効審決の取消訴訟。争点は,特許法17条の2第3項違反の有無。

無効審決において、「バラスト水処理装置が船舶後方の非防爆エリア」に設置されることを特定する請求項6は、バラスト水処理装置が舵取機室内に設置されるとう本願の出願当初の発明の要旨を逸脱するものであるから、新規な事項であると判断された。

判決では、バラスト水処理装置を「非防爆エリア」に配設するという技術的思想は、当初明細書の【0030】によってサポートされている以上,当初明細書において,舵取機室に関する特有の技術的思想が開示されているとしても,そして,バラスト水処理装置を「非防爆エリア」に配設することに関連する記載が【0030】においてだけであるとしても,「非防爆エリア」に関する本件発明6が、特許法17条の2第3項の規定を満たすことについての判断を左右するものではないと判示し、審決を取り消した。

開催日
事件番号平成23年(ワ)第6878
技術分野塗料組成物
キーワード方法発明の権利解釈・権利行使・販売利益への寄与率、品質等誤認惹起行為(不競法2条1項13号)
担当弁理士倉元なぎさ
原告ヒメノイノベック株式会社
被告株式会社フッコー
判決結果差止認容、廃棄認容、損害賠償認容
争点
  1. 特許権に基づく請求関係
    争点1. 単純方法の発明の認定並びに製造販売等差止及び廃棄請求の可否
    争点2. 特許2に基づいた間接侵害の成立(特許法101条5号)
    争点3. 方法発明の侵害による損害額(販売利益への寄与率)
  2. 不正競争防止法に基づく請求関係
    争点4. 品質等誤認惹起行為(不競法2条1項13号)の認定並びに差止及び廃棄請求の可否
事案の概要

特許請求の範囲、明細書の記載から、特許1は単純方法の発明であり、方法の使用の差止は認容されたが、製造販売等について廃棄請求は棄却された。

特許2の単純方法の発明に使用する物について特許法101条5号の間接侵害が認められ、製造販売等差止及び廃棄請求が認められた。

損害額の算定に当たり、独占的通常実施権者だった時期でも102条2項が類推適用された。また、侵害品の販売利益への寄与率は、特許1が単純方法の発明であること、発明の作用効果が侵害品の販売時に訴求されていなかったこと、競業他者がいたこと、により覆滅され、40%とされた。

被告が商品名「しっくいペイントAg+」及び「しっくいHR」を使用していたことについて、「しっくい」の意味から石灰又はドロマイトプラスターを含まない製品に「しっくい」の名称を使用すると需要者に石灰又はドロマイトプラスターを含む製品であると誤認を与えるおそれがあるとして、品質等誤認惹起行為(不競法2条1項13号)に該当するとされた。これにより被告は石灰又はドロマイトプラスターを含まない製品への「しっくいペイントAg+」及び「しっくいHR」の使用が差し止められ、廃棄請求も認容された。

開催日
事件番号平成24年(行ケ)第10412
技術分野
キーワード容易想到性
担当弁理士下田俊明
原告株式会社タイキ
被告特許庁長官
判決結果審決取消(請求認容)
争点請求項1に係る発明が、引用発明から進歩性を有するか否か
事案の概要

発明の名称を「化粧用チップ」とする発明について、拒絶査定不服審判において拒絶審決がされたため、その審決の取消を求めた事案である。

審決では、本願明細書の記載によると、「目の際を化粧する際にも化粧用チップの端縁部4の幅方向を、まつげに沿って付け、次いで目頭から目尻にかけて線を引くようにして化粧料を塗布する。」との記載があるため、引用発明のアイライナーは、本願発明の「化粧用チップ」に含まれると判断した。

しかしながら裁判所は、「化粧用チップ」と「アイライナー」は、異なるものであると判断し、審決を取り消した。

開催日
事件番号平成24年(行ケ)第10340
技術分野機械
キーワード進歩性
担当弁理士関誠之
原告株式会社小森コーポレーション
被告カーベーアー-ノタシ ソシエテアノニム
判決結果審決取消(有効審決取消)
争点容易想到性
事案の概要

甲1発明について,検査ユニットを2組から3組にすることは,当業者が,検査目的や検査対象を考慮の上,適宜選択し得る設計事項であり,また,それ自体一般的な課題であるとともに検査ユニットの組数を増やすことによっても生じる,各検査ユニットの小型化という課題の解決のために,検査カメラとして周知技術である線形カメラを選択することも,当業者が適宜に行い得るものである。

さらに,検査の完了とシートの各検査胴からの取出しに係る本件発明1と甲1発明との間の相違点は,一応の相違点ではあるものの,実質的な相違点とはいい難い上,この一応の相違点についても,検査の完了後にシートを各検査胴から取り出すとの構成は,当業者が適宜に採用し得るごく一般的な構成であるにすぎず,加えて,甲1発明において,それ自体一般的な課題であるとともに検査ユニットの小型化に伴っても生じる,検査胴に載着されたシートの受渡しや処理の精度を高めるという課題の解決のために,甲2発明を適用して,各シート検査における検査が完了したときにのみ検査済みのシートを各検査胴から取り出すように構成することも,当業者が容易に想到し得ることであるということができる。

開催日
事件番号平成24年(行ケ)第10206,第10207
技術分野化学・医薬
キーワード新規性、進歩性
担当弁理士阿津川裕佳
原告遼東化学工業株式会社
被告宇部興産株式会社、田辺三菱製薬株式会社
判決結果請求棄却
争点被告の特許権(第4562229号、4704362号)が無効理由を有するか
事案の概要

(本件は光学異性体の片方に関する発明であり、そのラセミ体については優先日に既に公知であった。)東京高裁平成3年判決は、光学異性体は一般に旋光性の方向以外の物理化学的性質においては差異がないからラセミ体の開示をもって光学異性体が開示されているというべきであるとして発明の新規性を否定した判決であって、本件特許の優先日の技術常識を参酌したものでないことは明らかであるから、同判決を本件について適用すべき裁判例ということはできない。

本件特許の優先日における技術常識に照らせば、ある化学物質の発明について光学異性体の間で生物に対する作用が異なることを見出したことを根拠として特許出願がされた場合、ラセミ体自体は公知であるとしても、それを構成する光学異性体の間で生物に対する作用が異なることを開示した点に新規性を認めるべきであって、ラセミ体の開示をもって光学異性体が開示されているとして新規性を否定するのは誤りである。

開催日
事件番号平成25年(行ケ)第10300
技術分野ポリウレタン
キーワード新規性・記載要件
担当弁理士石丸竜平
原告スリーエム カンパニー
被告特許庁長官
判決結果審決取消(請求認容)
争点原告の特許出願が、引用文献から新規性を有するか否か
事案の概要

ポリウレタンには,「ショア10Aから90D」までの硬度(硬さ)があるとされている(乙1)。他方,前記のとおり,引用発明のポリウレタンは,「シヨア硬度が10より低い」と記載されているが,同記載における「シヨア硬度」が「ショアA硬度」を指すか否か,「シヨア硬度10」がどの程度の硬度であるか明確でない。

したがって,引用発明のポリウレタンが「シヨア硬度が10より低い」と記載されていることのみから,本願発明1におけるポリウレタンの性質である「94未満のショアA硬度」の要件と重複一致し,また,本願発明1の構成c及びdを満たす蓋然性が高く,相違点1は実質的な相違点でないと判断したことには,誤りがあるというべきである。

開催日
事件番号平成24年(行ケ)第10454
技術分野商標
キーワード公序良俗違反、出所混同(広義の混同)
担当弁理士土野史隆
原告北海道デザイン株式会社
被告プーマエスイー(審決時の名称 プーマ アーゲー ルドルフ ダスラー スポーツ)
判決結果審決維持(請求棄却)
争点 ①原告登録商標の商4-1-7該当性
②原告登録商標の商4-1-15該当性
事案の概要

原告登録商標「KUMA+(クマの図形)」についてなされた、被告商標「PUmA+(ピューマの図形)」を引用した登録無効審決の取消を求めた事案である。裁判所は各争点につき以下のように判示し、無効審決を維持した。

  • 争点①について

    (原告は)引用商標の著名であることを知り,意図的に引用商標と略同様の態様による4個の欧文字を用い,引用商標のピューマの図形を熊の図形に置き換え,全体として引用商標に酷似した構成態様に仕上げることにより,・・・・・引用商標に化体した信用,名声及び顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する不正な目的で・・・・ そして,本件商標をその指定商品に使用する場合には,引用商標の出所表示機能が希釈化(ダイリューション)され,引用商標に化体した信用,名声及び顧客吸引力,ひいては被告の業務上の信用を毀損させるおそれがある・・・・そうすると・・・・商標を保護することにより,商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り,需要者の利益を保護するという商標法の目的(商標法1条)に反するものであり,公正な取引秩序を乱し,商道徳に反するものというべきである、と判示した。

  • 争点②について

    被告商標「PUmA+(ピューマの図形)」の周知・著名性を認定。被告商標と原告商標「KUMA+(クマの図形)」の書体・構成文字・図形等の共通性により、看者に外観上酷似した印象を与えると認定(文字の縦線間の隙間の幅が若干異なる等の差異は,共通点を凌駕するものではない)した。

    衣類や靴等においては、商標をワンポイントマークとして小さく表示する場合も少なくなく、商標の微細な点まで表されず、需要者が商標の全体的な印象に圧倒され、些細な相違点に気付かないことも多い、として、取引の実情が勘案された。これら総合的に勘案し、広義の混同を生ずるおそれがある、と判示した。

開催日
事件番号平成24年(ネ)第10094
技術分野機械
キーワード機能的クレーム、均等論
担当弁理士中村剛
原告有限会社ケイ・ワイ・ティ
被告サンワサプライ株式会社
判決結果控訴棄却(非侵害)
争点機能的表現による本件特許発明の構成要件を充足するか。機能的クレームに均等論を適用できるか否か
事案の概要

「パソコン等の器具の盗難防止用連結具」という名称の発明について本件特許権(特許第3559501号)を有する控訴人が、被控訴人による被告各製品の販売等が本件特許権を侵害するものであると主張して、被告各製品の販売等の差止め及び廃棄並びに損害賠償を求める事案である。原判決は、被告各製品が本件特許権に係る発明の技術的範囲に属するものとはいえないとして、控訴人の請求をいずれも棄却したため、控訴人は、原判決を不服として控訴したが、裁判所は控訴人の本訴請求はいずれも理由がないとして、控訴を棄却した。機能的クレームへの均等論の適用については肯定する立場を明確にした。

開催日
事件番号平成24年(行ケ)第10335
技術分野製紙
キーワード進歩性
担当弁理士杉江顕一
原告栗田工業株式会社
被告特許庁
判決結果審決取消(請求認容)
争点原告の特許出願(特願2006-309342(不服2011-15748))が、引用文献から進歩性を有するか否か
事案の概要

刊行物1には、炭酸カルシウムが存在する製紙工程において、微量スライムが炭酸カルシウムを凝集させることにより、紙に炭酸カルシウムを主体とする斑点が発生すること、また、製紙工程水に、塩素系酸化剤とアンモニウム塩との反応物を添加することにより、このような斑点を防止できることについては記載も示唆もない。周知例1,2には、炭酸カルシウムが存在する製紙工程において、製紙工程水に、塩素系酸化剤とアンモニウム塩との反応物を添加することにより、紙に発生する炭酸カルシウムを主体とする斑点を防止できることについて記載も示唆もない以上、引用発明に係る方法を、炭酸カルシウムが存在する製紙工程において実施することにより、紙に発生する炭酸カルシウムを主体とする斑点を防止する動機づけは認められない。

開催日
事件番号平成24年(行ケ)第10213(第1事件)、第10220(第2事件)
技術分野カメラ用レンズ
キーワードサポート要件、容易想到性
担当弁理士山田修一
原告 第1事件原告:株式会社シグマ
第2事件原告:株式会社ニコン
被告 第1事件被告:株式会社ニコン
第2事件被告:株式会社シグマ
判決結果 第1事件請求認容
第2事件請求棄却
争点第1事件被告、第2事件原告の特許権(第3755609号)が無効理由を有するか
事案の概要

本件発明1は,各レンズ群の配置関係や移動関係を特定したものであって,具体的に設計されたズームレンズを数値データとして特定したものではないし,甲3発明も数値データに係る発明として認定されるものではないから,甲3発明に基づく容易想到性を検討する上で,甲3に記載されている実施例の諸元の値のデータは阻害要因となるものでないことは明らかである。審決の上記説示をもって阻害要因とすることはできない。

1群フォーカス方式に利点があるとしても欠点もあるのであって,その利点だけを取り上げて動機付けがないと解することはできない。本件発明1は,各レンズ群の配置関係や移動関係を特定したものであって,具体的に設計されたズームレンズを数値データとして特定したものではなく,甲3発明も数値データに係る発明ではないから,甲3発明に基づく容易想到性を検討する上で,特許権者の主張するような動機の有無を検討する必要がないということもできる。

開催日
事件番号平成24年(行ケ)第10289
技術分野破砕カートリッジ
キーワード進歩性
担当弁理士杉本良平
原告日立造船株式会社
被告Y
判決結果審決取消(請求認容)
争点原告の特許権(特許第4431169号)が、引用文献から進歩性を有するか否か
事案の概要

一般に,破砕対象に見合ったニトロメタンの量や含有率を選択して使い分けることは,解体現場において一般的に行われていることからすれば,成分調整されていない純度100%のニトロメタンのみが記載の対象とされていると解すべきでなく,成分調整されたニトロメタンについても記載の対象とされていると解するのが自然である。

また,甲1発明の「ニトロメタンなどの爆発性物質あるいは可燃性物質」に代えて,本件特許発明1の「主成分のニトロメタンと,メタノールおよびオイルからなるラジコン用のグロー燃料」を用いることで,破壊用薬剤としての作用効果に差異は認められない。

開催日
事件番号平成24年(行ケ)第10321
技術分野材料(化学)
キーワードサポート要件、実施可能要件、明確性要件
担当弁理士菅家博英
原告積水化学工業株式会社
被告株式会社クラレ
判決結果審決取消(無効審決取消)
争点原告特許(特許第2999177号)がサポート要件、実施可能要件、明確性要件を満たしているか否か
事案の概要

発明の名称を「合わせガラス用中間膜及び合わせガラス」とする特許権について、被告がした無効審判についての審決(無効審決)の取消を求めた事案である。特許庁がした審決(サポート要件違反、実施可能要件違反、明確性要件違反)について、裁判所はいずれも取消事由があるとして、審決を取り消した事案である。

開催日
事件番号平成24年(ネ)第10080
技術分野容器
キーワード均等論
担当弁理士大竹裕明
原告株式会社コスモライフ
被告株式会社ザ・トーカイ
判決結果控訴棄却(棄却判決維持)
争点原告の特許権(特許第4113871号)を侵害するか否か
事案の概要

発明の名称を「飲料ディスペンサ用カートリッジ容器」とする特許権について、被告製品が非侵害であるとの原判決の取消を求めた事案である。控訴審では原告(控訴人)が均等侵害を予備的に主張したが、側壁部の柔軟性の程度が相違しており、また、当該相違点は本質的部分であるとし、予備的主張を退けた事案である。

開催日
事件番号平成24年(ネ)第10028、10045
技術分野職務発明
キーワード時効
担当弁護士森田雄貴
原告Y
被告三菱化学株式会社
判決結果一部認容
争点一部請求訴訟における残部の時効消滅の成否
事案の概要

裁判所は,

「数量的に可分な債権の一部につき訴えを提起したとしても,当該訴訟においてその残部について権利を行使する意思を継続的に表示していると認められる場合には,請求されている金額についてその残部の訴訟物が分断されるものではなく,また,残部について催告が継続的にされていると認めることができるから,当該残部の債権についても消滅時効の進行が中断するものと解すべきである。そして,当該訴訟係属中に訴えの変更により残部について請求を拡張した場合には,消滅時効が確定的に中断する。」という規範をたてて,

「本件において,原告は,訴状において,相当対価の総額として主張した約20億6300万円から既払額を控除した残額の一部として150万円及びこれに対する遅延損害金の支払を請求するとしつつ,「本件請求については時効の問題は生じないものと考えられるが,被告からいかなる主張がなされるか不明であるので,念のため,一部請求額を『150万円』として本訴を提起したものであり,原告は追って被告の時効の主張を見て請求額を拡張する予定である」と記載していたのであるから,本件訴訟で時機をみて残部についても権利を行使する意思を明示していたと認められる。したがって,当該残部の請求債権の消滅時効の進行は,遅くとも上記訴状を第1回口頭弁論期日において陳述した平成19年6月26日に催告によって中断し,この催告は原告の特段の主張がない限り本件訴訟の係属中継続していたと認めるべきところ,その後,平成21年8月17日に原告が訴えの変更により残部について請求を拡張したことにより,当該残部の請求債権の消滅時効は確定的に中断したものというべきである。」

というあてはめをして,一部請求訴訟である本件において残部の時効消滅を認めた。

開催日
事件番号平成24年(行ケ)10296
技術分野遺体処理用具
キーワード引例の記載
担当弁理士北山高雅
原告X
被告株式会社ALEX
判決結果請求認容(無効審決の取り消し)
争点容易想到性
事案の概要

段落【0017】におけるスポンジの小片4に関する記載は,第1の実施形態の処置用具に関するその他の記載と整合せず,この段落にだけ浮き上がって触れられているものであり,しかも,第2の実施形態の処置用具において明示された「スポンジの小片4」の使用方法とも整合しないことになる。当業者が,甲32公報の記載に接し,その記載を整合的に理解しようとすれば,段落【0017】におけるスポンジの小片4の記載は,明細書の編集上のミスと認めざるを得ない。すなわち,第1の実施形態の処置用具は,スポンジの小片4を有していないと理解するのが自然である。少なくとも,このような他の記載と整合しない断片的な記載から,「可撓性チューブの一端開口部に(防湿用キャップ5に加えて)スポンジの小片4を有する第1の実施形態の処置用具であって,一端開口部を遺体の孔部に挿入した後にスポンジの小片4を押し出す」という構成が甲32公報に開示されていると認めることはできない。

開催日
事件番号平成23年(行ワ)6868
技術分野化学
キーワード数値範囲の測定方法、技術的範囲
担当弁理士諌山雅美
原告電気化学工業株式会社
被告新日鉄住金マテリアルズ株式会社
判決結果請求棄却
争点被告製品は本件発明の技術的範囲に属するか否か
事案の概要

被告によるシリカ製品の製造・販売・販売のための展示行為に対し、「シリカ質フィラー及びその製法」に係る特許権を有する原告が該特許権を侵害するものとして、損害賠償を請求した事案である。裁判所は、数値範囲で規定される本件特許発明の技術的範囲への被告製品の属否に関し、その数値範囲の測定方法が明細書に定義されていない場合は、出願時において通常行われていた測定方法のいずれでも充足するのでなければ、被告製品が原告特許発明の構成要件を充足するということはできないと示し、被告の非侵害を認めて特許権者の請求を棄却した。

開催日
事件番号平成24年(行ケ)10262
技術分野化学(ガラス)
キーワード動機づけ
担当弁理士堺繁嗣
原告ショットアクチエンゲゼルシャフト
被告特許庁長官
判決結果請求認容(審決取消)
争点進歩性(課題の異同・動機づけ)
事案の概要

本願発明と引用発明とでは,解決しようとする課題が相違し,また,引用発明において特定の構成(化学的清澄方法)を併用する動機付けがあるとはいえない。

開催日
事件番号平成24年(行ケ)10232
技術分野CMP装置
キーワード阻害要因
担当弁理士香坂薫
原告アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
被告株式会社東京精密
判決結果請求認容
争点容易想到性、阻害要因
事案の概要

原告(アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド)の有する本件特許について,被告(株式会社東京精密)から無効審判請求(無効2007-800172号事件)を受けた本件特許(特許第3431115号)について、特許庁は、原告の訂正を認めた上で、請求項9,18,19,20,24,25,27,28,29,30,31,32,39,52に係る発明についての特許を無効とする審決をした。本件は,原告がその取消しを求めた訴訟。

裁判所は、「甲1発明(2ないし6,8)において,上記「溝2」に研磨液を十分保持させ,上記「溝2」に形成された「貫通孔3」に,上記「ウエハ7」への照射光とその反射光とを通すためには,透明ガラス製の中実な材料からなる「透明窓材4」を上記「貫通孔3」に嵌め込む構成とするほかはないから,甲1発明(2ないし6,8)において,上記「透明窓材4」の設置位置を「研磨布5」に変更する動機付けがあるとはいえず,むしろ阻害要因があるというべきである。」と説明し、本件各発明が,甲1ないし甲5に記載された発明ないし周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとした審決の判断は誤りであるとした。

開催日
事件番号平成24年(行ケ)10312
技術分野インク収納容器
キーワード容易想到性
担当弁理士増渕敬
原告エステー産業株式会社、株式会社プレジール
被告キヤノン株式会社
判決結果請求棄却
争点本件発明が、引用発明に基づいて容易に発明することができたものであるか
事案の概要

無効審判請求棄却に対して、容易想到性判断の誤り、サポート要件違反、実施可能要件違反、明確性違反を理由として、原告が審決取消訴訟を提起した事案。裁判所は、引用発明について、本件発明と同様の解決課題を有するものではなく、また、本件発明の構成は開示されていないと判断した。そのうえで、本願発明にかかる課題を解決するため、引用発明および他の公知技術を組み合わせようとする動機付けを得るとは認められないとし、原告の請求を棄却した。

開催日
事件番号平成23年(ワ)19435、19436
技術分野医薬
キーワード間接侵害(課題の解決に不可欠なもの)
担当弁理士安西悠
原告武田薬品工業株式会社
被告日新製薬株式会社、高田製薬株式会社、富士フイルムファーマ株式会社、サンド株式会社、第一三共エスファ株式会社、テバ製薬株式会社、日医工株式会社、辰巳化学株式会社、小林化工株式会社、持田製薬株式会社
判決結果請求棄却(特許権非侵害)
争点被告ら各製剤が「その発明による課題の解決に不可欠なもの」に当たるか否か
事案の概要

本件は、発明の名称を「医薬」とする特許出願1(特願平8-156725、国内優先権主張日は平成7年6月20日)をし、平成13年1月19日、設定の登録(特許第3148973号)を受けた。また、発明の名称を「医薬」とする特許出願2(特願平8-156725の分割出願である特願平9-360756、国内優先権主張日は平成7年6月20日)をし、平成13年6月22日、設定の登録(特許第3973280号)を受けた。

複数の薬剤を組み合わせてなる糖尿病等予防等医薬に関する特許を有する原告は、該医薬のうち単一の薬剤を製造販売した被告らに対し、被告ら行為は特許法第101条第2号の間接侵害を構成するとして特許権侵害差止請求等した。裁判所は、「特許法101条2号における「発明による課題の解決に不可欠なもの」について、特許請求の範囲に記載された部材、成分等であっても、課題解決のために当該発明が新たに開示する特徴的技術手段を直接形成するものに当たらないものは、「発明による課題の解決に不可欠なもの」に該当しない。既存の部材の新たな組合せに係る発明において、単剤としてや、既存の組合せに用いる場合にまで、既存の部材が「その発明による課題の解決に不可欠なもの」に該当すると解するとすれば、当該発明に係る特許権の及ぶ範囲を不当に拡張する結果をもたらすとの非難を免れない。このような組合せに係る特許製品の発明においては、既存の部材自体は、その発明が解決しようとする課題とは無関係に従来から必要とされていたものに過ぎず、既存の部材が当該発明のためのものとして製造販売等がされているなど、特段の事情がない限り、既存の部材は、「その発明による課題の解決に不可欠なもの」に該当しないと解するのが相当である」旨判示し、原告請求を棄却した。

開催日
事件番号平成23年(ワ)10693
技術分野化学(鍋の表面硬化・耐食性等処理)
キーワード化学(鍋の表面硬化・耐食性等処理)
担当弁理士安西悠
原告株式会社和泉利器製作所
被告株式会社リバーライト、株式会社タカツ
判決結果請求棄却(特許法104条の3の抗弁認容)
争点新規性欠如により本件特許は特許無効審判により無効とされるべきか
事案の概要

本件は、発明の名称を「鍋」とする特許出願(特願2006-343887)をし、平成22年8月6日、設定の登録(特許第4562094号)を受けた。被告に対し、原告は該特許権侵害差止請求したところ、被告は該特許権が特許法第29条第1項第2号に違反するとして同第104条の3の抗弁をした。

裁判所は、「公然実施について、当該発明の内容を現実に認識したことまでは必要ではなく、知り得る状況で実施されていれば足りると解すべきであり、また、その判断の基準は一般人ではなく当業者と解すべきである。本件発明は、東洋金属熱錬及び同社の労働組合が、上記態様において伊勢工業製品を頒布したことにより、本件特許出願前に公然実施されていたといえることから、新規性がなく(特許法29条1項2号)、本件特許は特許無効審判により無効とされるべきものである」と判示し、原告請求を棄却した。

開催日
事件番号平成24年(ネ)10015
技術分野
キーワード法102条2項
担当弁理士関誠之
原告サンジェニック・インターナショナル・リミテッド
被告アップリカ・チルドレンズプロダクツ株式会社
判決結果原告の請求について一部認容,被告の請求を棄却
争点特許法102条2項の適用に、特許権者の実施は要件となるか
事案の概要

第1審では、「原告は,日本国内において本件特許権を実施していたと認めることはできず,同法102条2項の推定の前提を欠き,同項に基づき損害額を算定することはできない」とされた。一方、本判決では、「特許権者に,侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には,特許法102条2項の適用が認められると解すべきであり,・・・そして,後に述べるとおり,特許法102条2項の適用に当たり,特許権者において,当該特許発明を実施していることを要件とするものではないというべきである。」と判示した。

開催日
事件番号平成24(行ケ)10020
技術分野LED照明
キーワード実施可能要件
担当弁理士下田俊明
原告パナソニック株式会社
被告Y
判決結果請求認容(審決取消)
争点実施可能要件に係る判断の誤り
事案の概要

本件は、発明の名称を「発光装置」とする特許出願(特願2004-363534。国内優先権主張日:平成16年4月27日、同年6月21日、同月30日)をし、平成20年5月23日、設定の登録(特許第4128564号)を受けた。

該特許権に対し、被告は特許無効審判を請求したところ、特許庁は、平成23年12月12日、「本件特許の請求項1、2、4及び6ないし13に係る発明についての特許を無効とする。」旨の本件審決をし、これを不服とした原告が、審決の取消しを求めた事案である。

本件審決に係る実施可能要件の認定の誤りを指摘した上で、更に、「赤色蛍光体の製造方法については、本件出願時には製造条件が未だ最適化されていないため、内部量子効率が低いものしか得られていないが、製造条件の最適化により改善されることまで記載されているものである。そうすると、研究段階においても、赤色蛍光体について60ないし70%の内部量子効率が実現されているのであるから、今後、製造条件が十分最適化されることにより、内部量子効率が高いものを得ることができることが記載されている以上、当業者は、今後、製造条件が十分最適化されることにより、内部量子効率が80%以上の高い赤色蛍光体が得られると理解するものというべきである。」と判示し、審決を取り消した。

開催日
事件番号平成21(ワ)23445
技術分野機械(オーブン)
キーワード独占的通常実施権
担当弁護士森田雄貴
原告日環エンジニアリング株式会社、キシエンジニアリング株式会社他
被告エス・イーエンジニアリング株式会社
判決結果請求一部認容
争点独占的通常実施権の成否(独占的通常実施権者の、固有の損害賠償請求権の存否)
事案の概要

本件は、発明の名称を「オープン式発酵処理装置並びに発酵処理法」とする特許第3452844号の特許権者である原告キシエンジニアリング株式会社及び発明の名称を「ロータリー式撹拌機用パドル及びオープン式発酵処理装置」とする特許第3682195号の特許権者である原告A並びに上記原告両名から本件各特許権について独占的通常実施権の許諾を受けたと主張する原告日環エンジニアリング株式会社が、別紙物件目録1記載の装置(イ号装置)及び同目録2記載の装置(ロ号装置)が本件各特許権の特許発明の技術的範囲に属する旨主張して、原告キシエンジニアリング及び原告Aにおいては、被告に対し、特許法100条1項に基づき、イ号装置及びロ号装置の製造及び販売の差止めを、原告ら3名においては、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。

裁判所は、独占的通常実施権者の事実上の独占を認定し、独占的通常実施権者に固有の損害賠償請求権を認めた。裁判所はまた、独占的通常実施権者は専用実施権者と同等の地位にあることから、法102条1項及び2項を類推適用出来ると判断した。

開催日
事件番号平成23(行ケ)10443
技術分野構造体(コネクタ)
キーワード進歩性
担当弁理士北山高雅
原告エフシーアイ株式会社
被告特許庁長官
判決結果請求認容(審決取消)
争点2つの仮想構成を引用文献に適用することの動機づけがあるか否か
事案の概要

本件は、発明の名称を「電気コネクタのために改良されたグロメットタイプジョイント及びそのジョイントを備えたコネクタ」とする特許出願について、拒絶査定不服審判を請求したが拒絶審決がされたため、それに対して審決の取り消しを求めた事案である。審決では、仮想構成1(リブ部の後側配置)、及び、仮想構成2(リブ部の後方突出)を、甲1に適用することで、本願発明は、当業者が容易に想到し得るものであるとされた。これに対して裁判所は、「仮想構成1を採用した段階で、甲2の解決手段のみならず、甲2の作用効果も同時に達成されることとなって、更にそこから仮想構成2のように変更することについては、もはや動機づけが存在しない」と判断した。

開催日
事件番号平成24(行ケ)10085
技術分野機械(洗濯機)
キーワード29条の2
担当弁理士大竹裕明
原告三星電子株式会社
被告特許庁長官
判決結果請求棄却
争点先願明細書に本願発明が開示されているか否か(29条の2)
事案の概要

本件は、発明の名称を「洗濯効果を向上させる洗濯機」とする特願2007-327916号に対する拒絶査定を不服とした原告が拒絶査定不服審判を請求したが、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、この審決を不服とした原告が、審決の取り消しを求めた事案である。

原告は、先願明細書記載発明の「6角形状の折り目9及び10」は同一平面上になく,両発明は本願発明にいう「多角辺部」についても構成が異なる旨を主張したが、裁判所は原告の主張を採用せず、請求を棄却した。

開催日
事件番号平成23(行ケ)10235
技術分野有機照明
キーワードサポート要件
担当弁理士菊池美香
原告ザ トラスティーズ オブ ブリンストン ユニバーシティー、ザ ユニバーシティ オブ サザン カリフォルニア
被告株式会社半導体エネルギー研究所
判決結果請求認容(審決取消)
争点サポート要件
事案の概要

本件は、発明の名称を「有機LED用燐光性ドーパントとしての式L2MXの錯体」とする特許出願(特願2001-541304。パリ条約による優先権主張日:平成11年12月1日(米国))をし、平成17年8月23日、その一部につき分割出願をし(特願2005-241794)、平成21年8月14日、設定の登録(特許第4358168号)を受けた。

該特許権に対し、被告は特許無効審判を請求したところ、特許庁は、平成23年3月23日、「訂正を認める。特許第4358168号の請求項1ないし7に係る発明についての特許を無効とする。」旨の本件審決をし、これを不服とした原告が、審決の取消しを求めた事案である。

本件明細書には課題の記載が無いところ、裁判所は、審判で認定した課題と異なる(よりハードルの低い)課題を認定し、その結果として、本件明細書はサポート要件を満たしていると判断した。

開催日
事件番号平成24(行ケ)10004
技術分野化学(樹脂組成物)
キーワード顕著な効果
担当弁理士菊池美香
原告ヤマウチ株式会社
被告イチカワ株式会社
判決結果請求認容(審決取消)
争点明細書記載の本願発明が奏する効果が顕著であるか否か
事案の概要

本件は、発明の名称を「シュープレス用ベルト」とする特許第3698984号の特許権に対し、被告が無効審判を請求したところ、特許庁は、平成23年11月30日、「特許第3698984号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。特許第3698984号の請求項2に係る発明についての審判請求は、成り立たない。」との審決をし、この審決を不服とした原告が、審決の取り消しを求めた事案である。

本願では、硬化剤としてジメチルチオトルエンジアミンを使用することを特徴とし、これによりクラックの発生が顕著に抑制されるという効果は、甲第1号証及び同第2号証からも、また、本件特許出願時の技術水準からも、当業者といえども予測することができない顕著なものというべきである、と裁判所は判示して審決を取消した。